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学士を厳格に [ 教育, 記事 ]

asahi.com:大学の卒業、厳格に 「全入時代」迎え質を確保 中教審 - 暮らし
問われる「学士力」、楽じゃないぞ!大学全入時代 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

忙しくて,最近あまりエントリーを書いていないが,話題を追ってないわけじゃない.
中教審が学士の質を維持しろという無茶苦茶なことを言い始めたらしい.
現場をしれ.

ハッキリといわせてもらえば,この提言は実現不可能である.
全入を行っている限り,学士の質を維持することは不可能である.
何故無理だって言いきれるかって?
だって,ある年度の学士卒業者が0なんて,有り得ないでしょ?
今,現場はそんな状況なんですよ.少なくとも,ウチは.

そもそもだ.
高卒の質が保たれていないのに,なんで学士はそんなに厳格さを求めるのか.
これらは一連の流れなのだから,学士の質を保つためには,高卒の質を保つ必要があるだろう.
そうでないのならば,大学を4年で卒業できるなんて期待しないことだ.
中教審が示している「学士力」を身につけさせようと思ったら,現状の高卒に対して4年では短すぎる.

「学士力」のどれが現状の高等教育で実現不可能か示そう.
これは本学の本学科の場合である.
他の大学や学科では違う状況である可能性は往々にしてあるだろう.

◆「学士力」の主な項目◆

【知識】▽異文化の理解 外国などの文化を理解する▽社会情勢や自然、文化への理解 人類の文化や社会情勢などを理解する

【技能】▽コミュニケーション能力 日本語、特定の外国語で読み、書き、聞き、話すことが出来る▽情報活用力 インターネットなどの多様な情報を適切に使い、活用できる▽論理的思考力 情報や知識を分析、表現できる

【態度】▽チームワーク、リーダーシップ 他者と協力して行動したり、目標実現のために方向性を示せる▽倫理観 自分の良心や社会のルールに従って、行動できる▽生涯学習力 卒業後も自ら学習できる

【創造的思考力】知識、技能、態度を総合的に活用し、問題を解決することができる

倫理観と生涯学習力はどう考えても達成不可能だろう.
思考の中心は常に自分で「今日はオレの発表じゃないからゼミに行かない」とか,
欠席するときは連絡をしなさいと言っているのに,連絡がなかったりとか,
禁煙区域で「みんな吸ってるじゃん」とかいうモラルハザードなスモーカーとかとか.
倫理観は絶望的でしょう.
これって,大学で教えることですか?
大学で教えるようじゃ,完全に手遅れだと思うんですけどね.
生涯学習力も同様だ.
如何に勉強することなく,授業に行かずに,楽して,良い成績を取るかを考えている学生が,
卒業後に自ら何かを学習しようと考えるとは思えない.

もしもこの学士力に従った厳格な卒業判定が行われて,学士の質が保たれたとしましょう.
さぞ,修士や博士は優秀な人間揃いになることでしょう.
本当に,皮肉ではなく,優秀な人間揃いになると思います.
その結果,どうなるでしょうか.
あまり考えたくない結果となるでしょう.


まとめ
目標は良いぞ.正にその通りだ.もっとやれ.
結果,どうなろうともやりきる覚悟がないなら,絶対にできない.
それくらいに無茶苦茶なことをいっている.
なんで,現代教育はこんな無茶苦茶になってしまったんでしょうね.