« 博士なんて期待外れ | メイン | 「ゆとり」失敗の反省点を中教審が明確に »

続・青森大の「携帯電話での出欠確認システム」 [ ソフト技術, 教育, 研究, 記事 ]

なんかMLが回ってきた.
以前に新聞記事を取り上げた青森大開発の「携帯電話による出欠確認システム」についての続報のようだ.
要約すると,

弘前大にも試験導入されます!記事が掲載されてます!見てみて!

ってことらしい.
では見てみようではないか.

大学新聞 - 連載 出欠確認の教育効果

学力向上のスタートは講義であり、最も重要なのも講義である。しかし、これらは学生が授業に出席することを前提とした方法であり、学生が授業に出てこなければ全く効果が無い。

出欠確認の教育効果(2)

その通りです.
授業に出てこない学生に,どうやって学ばせるのか.
「授業に来ないのは教員の指導が悪いからだ」とか無茶苦茶なことをいう人もいる.
なんで高校まではちゃんと学校に行ってたのに,大学になると突然サボり始めるのだろうか.
真面目に登校するのもサボるのも自由だが,単位が取れなくてキレてる連中は一体何なんだ.

高校生であれば学校を休むことを社会的“悪”に位置づけられ、何が何でも学校に行かされる。しかし、大学生が授業を少しぐらいサボっても社会は寛容である。社会は大学生を大人扱いし、「自主的に勉強する」ことを重んじてきた。なぜ、高校生と大学生ではこれほどまで社会の扱いが違うのであろうか。それは、1877年(明治10年)に唯一の大学として設立した東京大学以来、大学生が優秀だった時代が長く続いたからではなかろうか。

出欠確認の教育効果(2)

おお!そうなのか.
なんだかとってもよく調べられていて,読物としても参考になるではないか.
しかしながら,明治と平成を比べても・・・
どんだけ社会は適応能力も学習能力もないんですか.

良い授業を行うことで、学生の出席を促すのは当然であるが、それだけで現代の全学生の出席率を高めるのは不可能である。学校を休みがちな学生に「休んではいけない、遅刻してはいけない」と、真面目な学生に「いつも頑張ってるね」とメッセージを送るのが出欠確認である。

出欠確認の教育効果(2)

「良い授業を行うだけではダメ」というのは如何か.
「良い授業を行っても出席を(ゆるやかな)強制しなくてはならない」という主張だろうか.
ところで,休みがちな学生にメッセージが本当に伝わるのだろうか.
「うぜー」って思われるだけのような気がするのだが・・・
出欠確認にそれ程までの可能性が秘められているとは.

私は出欠確認により、大部分の学生の学力を向上させることができると考えている。授業は聞かないより聴いた方が良い、聴いた方が学力も向上するのは明らかである。これが出欠確認による教育改革であり、その効果である。しかし、改革の実現には、多大な努力と労力が必要であり、それが継続できないために挫折することが多い。事実、従来の方法では、正確に出欠確認を行うためには多くの時間が必要である。だから、出欠確認が教育改革につながらない。

出欠確認の教育効果(2)

論理展開が飛躍している.
出欠確認と学力向上の関係性が明確ではない.
何故,厳密に正確に出欠確認ができると,学生は授業を聞くのだろうか.
青森大はそうなるのかもしれないが,
東海大では登校してきてニコニコをみたり,youtubeをみたり,mixiをみたりしています.
あまつさえ,寝ていたり,喋ってたり,どっかいっちゃったり.
始業時に登校してきているからって,授業を聞いているとは限らない.
そりゃぁ確かに,始業時にいる学生と遅刻してくる学生とでは大違いだが,
出欠確認の正確さと授業への真面目さは関係がないと思うのだが,如何だろうか.

しかし、残念ながら学生達の反応は逆である。「せこい」、「こそく」などあまりよくない評価を受けることが多い。なぜなら、ほとんどの学生は「ズル」をしていないからだ。一部の「ズル」をする学生対策のために出欠カードに押印すれば、大部分の学生は「どうしてここまで疑われないといけない!」と思うからである。

出欠確認の教育効果(3)

よく分かっていらっしゃる.
正にその通りだ.
しかし,間違っている.
「せこい」「こそく」などと評価してくるのは「ズルをしていない」学生ではない.
「ズルをしている」学生である.
真面目な学生なら,どういう方法で出席を取られようと気にしないはずだ.
疑っているわけではない.それがルールなのだ.
ましてや,指定の出席カードにハンコが押されているだけで,学生にとっての面倒は何一つ無い.
面倒があるのは,サボろう,楽をしよう,うまくかいくぐろう,と考えるものだけだ.
さらに言えば,真面目に毎日登校してくる学生は1回くらいの遅刻や欠席は全く気にしない.
だって,そうでしょ?
出席をしに来てるんですか?勉強をしに来てるんですか?

七色の声を使う場合も、出欠カードに友人の名前を書く場合もどちらも教員がいる教室内で行なう行為である。「教員に隠れて」行なうのである。その行為は僅かながらでも「罪の意識」がある。

出欠確認の教育効果(3)

「罪の意識」なんて,ないないw
カンニングして見つかっても「やってません」と頑なに認めない.
言い訳をすることしか考えて無く,自分が悪くなければどうでもいいと思ってる.
あっ!もしかして,ウチの大学だけ??

読み取らせて教室に入るつもりだったが、読み取らせた直後にお腹が痛くなったら教室に入ることができない。おなかは痛くならなくとも、読み取らせた直後に急に用を思い出すこともあるだろう。この場合は、授業にいなくても罪ではない。

出欠確認の教育効果(3)

ものすごくよく分析されすぎてて大興奮.
でも,この例は適切ではない.
これはどんな出欠確認システムでも同じである.
ただ,出欠確認が授業開始後なのか開始前なのかという違いだけ.
小中高なら授業中にトイレに行くことは稀だが,大学生なら授業中だって平気でトイレに行く.
ズボンにRFIDでも埋め込んで,各座席にRFIDリーダを付けるとかしないと,この手の攻撃は防げない.
防ぐ必要があるかという気はするけど・・・

第二が「パソコンが使えない教員でも使える容易性」であった。

出欠確認の教育効果(3)

超重要なことです.
情報系学部の教授だって,怪しいですよ?


さて,ここからは技術的に理解できない点を挙げていく.

学生の携帯電話を活用することで、低コストで、代返を防止し、簡単、効率的に出欠確認ができるシステムを独自開発した。具体的には、
①学生に携帯電話で出席登録のWeb画面にログインさせ、
②教員がその場で思い付いた一桁の番号を学生に選択させ、
③教員の指示で全員同時に登録させるのである。

出欠確認の教育効果(2)

やはりこの出欠確認フェーズがよく分からない.
1桁の番号は適当にその場で決めるようだが,
システム側にはどうやってその番号が指定の番号であると示すのだろうか.
教員は携帯電話を操作しないという構成になっているようだが・・・

これは想像だが,記録されるデータはアクセスした時間と数字だけなのかな?
数字が教員の指定した番号かどうかはチェックしないのかもしれない.
後からPCで操作する際に,指示外の番号を入れた学生をはじくのかもしれない.
しかしながら,「1分以内に入力する」ではなく,「1分以内に入力が終わる」だと思われるので,
この推測が正しいなら,メールで来ていない学生に番号を伝えられそうだ.

また,以前のエントリーで問題にした代返防止に使われる「起立して名前を告げる」という話の答えを見つけた.
以前のエントリーで示した新聞記事では「メールで」となっていたが,解説サイトでは出席結果に表示されるようだ.
これなら,メール不着の問題は回避できますね.


まとめ
やっぱり分からない.
何故,出欠確認を厳密に行うと,学力が向上するのだろうか.
青森大では2005年4月から導入されているようですから,是非とも学力の推移を明らかにして欲しい.
結果が目に見えれば,眉唾のオレも納得するだろう.

ところで,大人数の授業には向かないが,授業開始直後に小テストを行うという古典的な手法はどうですか?
授業に出席しなくてはテストを受けられない(出席を促す),
テストの点は成績評価に反映されるので勉強をしっかりする(学力低下に歯止め),
そしてテストを採点し,成績簿に記す(出欠確認).
青森大の方式を導入しても小テストの採点結果入力の手間は変わりませんよね.
だったら,古典的な手法の方が圧倒的に教育的でよいと思うのですが,如何でしょうか.


関連:
Yahoo!ブログ - 青森大学 福永栄一
福永栄一 携帯電話での出欠確認
携帯電話を利用した出欠管理システム(大学・短期大学・専修学校殿向け)