河北新報ニュース 携帯電話で出欠確認 青森大開発、他大学でも利用拡大
比較的まともそうなシステムである.
代返とのいたちごっこ大戦争に終止符を打つべく,工夫を施しているところが涙ぐましい.
難しい言葉でいうならば,腐心している.腐ってないよ.
出席管理については関連エントリーの「出席管理」も参照されたし.
学生の履修科目の出席状況が一目で分かり、教員の労力も大幅に軽減できるのがメリット。
学生側のメリットが全く書かれていない.
つまり,出席調査をされることで,学生が得るメリットはないということである.
その反面,出席簿に起こすとか,点呼するとか,授業時間が減るとかのデメリットを教員は受け続けているということである.
出席調査が如何に不毛であり,弊害の多いことであるかが分かるだろう.
だから,低コストで出席管理が確実に行えるのならば,教員は大手を振って利用するのだ.
確認方法は、講義中に教員が1けたの数字を発表。学生は携帯電話で、1分以内に数字と講義名を専用サイトに入力する。
携帯電話(に限らずWebを使った技術全般)を使った出席管理における最大の問題点は,
どこからでもアクセスできることであり,教室にいるかどうかをどの様に特定するかが重要になる.
このシステムでは教室にいる人に1桁の数字,要するにそこに居る者しかわかり得ないパスワードを配るわけだ.
細かいシステム構成が分からないのだが,1分以内に入力をするということは,
逆に考えれば,その授業に対する1桁の数字の有効期限が1分であると推測される.
では,その1桁の数字はどの様にして入手されるのか?
出席を取ろうと思ったときに教員がWebにアクセスして入手するのだろうか?
それとも授業開始前に数字を決定しておいて,授業に来るのだろうか?
恐らくは前者の方式が採用されているものと思われるが,携帯の操作に不慣れな教員もいるのではないか?
さらにいえば,某先生のように携帯を持ち歩かない(またはそもそも所有していない)という人もいるだろう.
大学が出席調査専用端末として貸与すれば事足りると思うのだが,そこまで真剣ではないのだろう.
それから,1桁が妥当かどうかという問題がある.
純粋に考えて,1分あれば10回の試行は容易のように感じられる.
総当たりで出席を試みることが可能ではないだろうか?
また,代返代行者から番号をメールで送ってもらっても十分に間に合いそうである.
次に示す代返対策機能があるようだが,低リスクなので,とりあえず一か八かで試みたい.
代返防止のため、無作為に選んだ数人に、起立して名前を告げるよう求めるメールが届く。
この手のシステムの最大の売りは代返防止機構にある.
これがこのシステムの肝だろうか.
出席者の何割が無作為抽出されるのか分からないが,数人ということから,数パーセントだろうか?
だとするならば,代返出席のリスクは僅かに数パーセント以下である.
学校に来なくても出席になれる確率が実に90%超ということになる.
積極的にチャレンジしたい.
それからメールは完全完璧ではないので,いつ届くか分からないし,必ず届く保証はない.
授業の教室によっては,電波状況が悪い,または圏外の可能性を否定できない.
そしてそのような状況下では,学生は頻繁に携帯を確認し,センター問い合わせをすることだろう.
授業中に携帯をいじっていても正当に言い訳が出来てしまう状況を与えている.
だってそうでしょ?
メールが一斉に送信されたとしても,一斉同時に受信されるとは限らない.
数人が「起立して名前を告げた」としても,それで全員である保証はない.
というか,そもそも誰にメールが送られているかを教員はどうやって確認するのだろうか?
確認リストがメールで送られてくるのだろうか?
それとも出席調査が終わった後に再度アクセスし,確認するのだろうか?
メールで行われているとしたら,いつ届くか分からない.
開発した福永准教授は「わずかな労力と時間で講義への出席を促せる。大学生の学力低下が問題となる中で、大学教育の改革につながる」と話している。
これはこれで1つの成果だと思われるが,大学教育の改革には一切繋がらない.
ビジネスにはなるだろうが.皮肉だよ.
何度だって述べるが,厳密に出席を取りたくて,かつ出席を促したく,さらに学力低下に歯止めをかけたいなら,
授業開始直後のミニテストしか有り得ない.
授業に出席しなくてはテストを受けられない(出席を促す),
テストの点は成績評価に反映されるので勉強をしてくる,勉強をしっかりする(学力低下に歯止め),
そしてテストを採点し,成績簿に記す(出席調査).
これほどまでに完璧なシステムがあるのに,何故ITシステムに頼らなくてはならないのか.
「携帯電話,携帯電話」っていいたいだけなのかと違うのか.
出席調査など工夫次第で,如何様にだってとることが出来る.
何も努力することなく,道具がないから上手くいかない.
そんな御託を並べるばかりが,現在の大学教員の最前線であるようだ.
完全に蛇足だが,記事タイトルが「青森,大開発」と読めた.